■第4回 R.A.M. 2005年3月23日〜3月30日 |
伴戸玲伊子
「始まりと終りの間」
6P(40.9×27.3cm)
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「湛えられた記憶」
この作品を見つめているとある瞬間、突然そのことが逆転しこの作品に見つめ返されているような気持になります。
水門からゆらゆらとゆらめき流れ出る水。それが水門の赤い色に反射し染まり更に鮮烈な美しさを湛え私にゆっくりゆっくりと近づいて来ます。そして何かを語ろうとするかのように私を見つめるのです。
「私が見ている」ということ、目前にあるのが「絵画」だということすら忘れあの赤い水の中に心を沈めてしまうのです。
この私と水(作品)との精神的、有機的結合が、現実社会のありとあらゆる平凡で世俗的な欲求から私を解放し更に、私のアニマ(魂)を活性化させてくれるような気がします。
素朴で清々しい色彩と素材そしてこの画家の創造精神からもたらされたこの作品による純粋経験が私たちを精神の飛翔に導くように感じられるのです。
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藤倉明子
「曇傘」
10F(53.0×45.5cm)
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「天蓋のある船」
激しい雲の咆哮。
嵐から船(宙に浮いた)を守ろうとするかの如く巨大な蓋が描かれています。
船を覆う「蓋」は鋭い線のストロークで空間を切り裂き、大地と天さえも寸断するような荒々しい力すら感じます。
きわめて奇抜な作品です。
しかしユニークなのは船が宙に浮いていたり、その上に蓋が描いてあるというようなことではなく、この作品で経験できる視点に存在するのだと思います。
私たちは描かれている対象の同一線上か、もしくはそれ以上高い位置から広大な時空で繰り広げられている作品の中のすべての光景を眺めることが出来るのです。
雲から蓋、船そして大地へ見下ろしてゆく視線、つまり神の視点を…。
世界中いたるところで存在する戦争、殺戮。また、一見平和に見える社会でも個人の欲求を満たすために他者を出し抜いたり蹴落としたりしています。
この作品を観ていると人間のこのような行為が卑小な、取るに足りないもののように思えてくるのです。
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奥村美佳
「ゆくえ」
12P(60.6×45.5cm)
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「空の香」
静かな風景です。
作品から湧き出る清冽な空気は特別なものに相違ありません。
遠くかすかに見える小高い山、細い道そして一葉の緑も一輪の花も付けない一本の木だけが画面を突き抜けるかのように力強く描かれています。
その木は天に向けて枝をまっすぐ伸ばし空を掴もうとするかの如くです。
私はこの作品から「冬の間にじっと春を待って芽吹きの準備をしていた大地の精がこの木だけ少し先に生命を与えた……」というイメージを抱きました。
生命というのは地上の目に見える部分だけで育まれ営まれているのでないことは言うまでもありません。
美しい花、瑞々しい緑を直接描かずとも自然の真の美しさ、生き生きとした生命の躍動をみごとにこの作品は私に想起させてくれたのです。
「豊かな生、美しい生」の存在を改めて感じることができる作品です。 |
佐藤美術館 主任学芸員 立島惠 |
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